• オゾンの基礎知識

    No.01 オゾンとは?

    オゾンの性質やその強力な効果、オゾンを安全に使用する方法について解説します。
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    オゾンとは?

    オゾンとは、一言でいうと「不安定で激しい酵素」のようなものです。

     

    (O3)は酸素原子(O)が3つ結合したものです。極めて不安定なガスで、空気中では分解して、酸素原子(O)と安定な酸素分子(O2)に変化します。酸素原子は、臭い成分などの他の物質と反応して安定化し、臭い自体を消滅させることができます。

    オゾンが分解した時に生じる酸素原子には強い酸化力があり、脱臭以外に、水や空気の浄化、殺菌、脱色、有機物除去など幅広い分野で用いられています。

    オゾンはオゾン層のオゾンです​

    オゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収して、地上に住む我々を守ってくれる層です。

     

    かつて、冷蔵庫やエアコンなどの冷媒として広く利用されていたフロンガスの発生でオゾンホールが空いてしまい、有害な紫外線が地表にやってくることで問題になっています。

    フロンガスはフッ素と塩素からなる化合物で、オゾンと塩素は非常に反応しやすく、オゾン層まで到達したフロンガス中の塩素が反応を起こした結果、一酸化塩素を作ります。

    Cl + O3 → ClO + O2

    この一酸化塩素が酸素と反応して、再び塩素に戻るのです。

    ClO + O → Cl + O2

    オゾン層の中に塩素が入ると、上記の反応によってオゾンと酸素原子が消滅します。塩素が何度も生成されることによって、オゾンが減少してオゾンホールが生まれます。塩素だけでなく、窒素や水素も同様の触媒反応でオゾンを分解します。

     

    オゾンホールができると、太陽からの光がオゾン層で吸収されず、有害な紫外線が地表に届きます。

     

    紫外線は日焼けを起こすような効果がありますが、皮膚に炎症を起こして、皮膚がんの発生率が高まります。

    オゾンホールは、地域によりその影響度合いが異なりますが、最も有名なのがオーストラリアです。UVインデックスという紫外線の強さの指標が「強い」「非常に強い」という上限に達している日も多いため、政府が「長袖のシャツを着て、日焼け止めを塗り、帽子をかぶり、サングラスをかけましょう」というキャンペーンを打ち出すほどです。

     

    現在では、オゾン層保護に関する国際的な取り決めであるモントリオール議定書によって、フロンの製造は全面禁止されています。

    先進国ではフロンに代わる物質が研究開発・生産され、冷媒として利用されるようになりました。

    最近では「R32」と呼ばれる物質が、オゾン層保護と、地球温暖化防止の両方を満たす冷媒用の物質として、エアコンメーカーを中心に利用が広がっています。

    これによって現在ではある程度、オゾンホールの拡大を食い止めていられるのです。

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    オゾンの特徴と用途

    オゾンの化学式は、酸素原子3つからなり立ちます。結合のエネルギーが弱いため、簡単に分解してしまいます。オゾンが分解されると、反応性の高い酸素原子が生まれます。これがオゾンの酸化力の原因となっています。

     

    オゾン(ozone)は、ギリシア語の「ozein」が語源で、におうことや嗅ぐことを意味しています。オゾンは独特の生臭いにおいがあります。

     

    酸化剤として利用されるものにフッ素もありますが、ほとんどにオゾンが使われています。

     

    オゾンは無公害のため、多く使われています。

     

    オゾンを酸化剤として使って、オゾンが残っていたとしても、時間が経てば酸素分子になりますので、自然の状態に戻ります。

     

    オゾンは酸化力と抗菌力が強いため、オゾンをたくさん使ったとしても残りません。

     

    食品をオゾンで除菌しても、化学薬品と違って残存しないため、そのまま食べることが可能となります。

     

    コンビニの食品のおにぎりやサラダ、サンドイッチなどの各種食品も、オゾンで除菌されています。時間が経つと腐ってしまうこれらのものも、オゾンで鮮度を維持することが可能となります。

    実際、多くの食品工場でオゾン水生成器が導入され、調理される食材がオゾン水で洗浄されることにより、販売される加工食品により長い賞味期限を設定できるようになっています。

    特に野菜は、普通の空気よりもオゾンを含んだ空気のほうが新鮮さを保ってくれます。長持ちさせることができるため、よく使われているのです。

    袋詰めになっていて、袋の中には空気が入っているように見える野菜や果物、カット野菜には、オゾンが封入されている「オゾンパック」が用いられているものが多数あります。

     

    鮮度保持ができるのですが、人体に害はないため、有益です。

     

    オゾンはさまざまなシーンで役に立ち、私達の身近にあるのです。

    何にオゾンを使うべきか?​

    オゾンの酸化力は非常に強力で、消臭・脱臭・除菌・脱色などに使われています。酸化力は強力なので、消臭や除菌を行った際に、室内や車内や容器などが心配になります。

     

    消臭や脱臭のためにオゾンを使う場合、それほど心配はありません。

     

    実際、多くの家庭やホテル、自動車の車内、病院、保育園、企業のオフィスなどで、消臭や脱臭のためにオゾン発生器が利用されていますが、これにより室内に置かれているものが劣化したという話はまずありません。また、直接オゾンのガスを吹き付けても、短時間で酸化したり摩耗したりすることはありません。

     

    酸化しやすいものや摩耗しやすいものは、ものによって大丈夫なものとそうでないものがあります。

    どんなものがオゾンの耐性が弱かったりするのか見ておいた方がいいでしょう。

     

    石、ガラス、セラミックなどの無機素材は全く問題がありません。

    ステンレスやチタンも問題ありません。

    鉄やニッケルは比較的摩耗しやすいです。

    テフロンや塩化ビニールは耐オゾン性が高く、問題ありません。

    ですが、ポリエチレンやポリプロピレンは劣化しやすいです。

    ゴムは、フッ素ゴム、バイトン、ハイパロンは耐酸性があり強いです。

    ですが天然ゴムは酸化してボロボロになりやすいので注意が必要です。

     

    これらの例は、オゾンガスを直接長時間吹きつけた場合です。消臭や脱臭の作業でオゾンを使用したせいで、何かが酸化してだめになったという例はほとんどありません。オゾン発生器のオゾン吹き出し口に物を近づけなければ、まず問題ありません。

    また、車内や室内などの広い場所で充満させる程度であれば、簡単に酸化もしませんし摩耗もしません。

    オゾンが脱臭してくれる仕組み​

    では一体、オゾンがどのようにして脱臭してくれるのか、見ていきましょう。

     

    最近は一般家庭でも、オゾン脱臭機がトイレについているものが見られるようになってきました。空港内のトイレに設置されている事例もあります。ずいぶんと身近になってきました。

    脱臭といってもいろいろなにおいがあります。

     

    オゾンが活躍するのは悪臭についてです。

     

    悪臭というのは典型的な公害で、昭和46年には悪臭防止法という法律が制定されています。悪臭への苦情は年々増え続けています。また、公害と呼ぶほどではない「家庭の中のにおい」「企業や施設の中のにおい」を気にする人も増えています。

    多くの人はにおいに対して、「芳香剤を使う」「脱臭スプレーを使う」といった、その場しのぎの方法であったり、「窓を開けて換気する」場合が多いようです。ただ、においの元がなくならない限りは、どれだけ芳香剤や脱臭スプレーを使ったり、換気を行っても、再びにおいが発生してしまいます。

     

    実際の悪臭の苦情を成分分析にしてみましょう。

     

    原因物質として、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二酸化メチル、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、スチレン、プロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸などがあります。

    これらの物質はほとんどが有機物です。そのため、燃やすと燃焼する物質が多いです。

    燃焼すると、熱により周りの酸素と結合して、急激に酸化します。酸化すると別の物質に変わるため、悪臭はなくなるのです。

    オゾン消臭法は、この原理を低温下で行います。

    オゾンの強力な酸化力で、熱を加えずに悪臭の原因物質を酸化させ、別の物質に変えてしまうのです。

     

    燃焼させたときに得られる酸化力を、燃焼させることなく得られるのがオゾンのすごい所です。

    オゾンには強力な脱臭効果がありますので、トイレだけでなくその応用範囲はさまざまです。パルプ工場や水道水のカビ臭さの除去にもオゾンは使われています。

    私たちは知らないうちにオゾンの恩恵を受けているのです。

     

    オゾン脱臭法には特徴があります。

    1.酸化力が強力で、他の消臭法では消えないにおいを除去できる

    2.大量に使用しても、オゾンは酸素分子に変化するので二次被害が生まれない

    3.空気が原料なので、オゾン発生器があればどこでもオゾンを作れる

     

    つまり、オゾンは芳香剤のように別のにおい物質を出して嗅覚をごまかすのではなく、におい物質そのものを分解します。

    よって、においの元が長期間残ってずっとにおいを発するようなことはありません。

    これが芳香剤とオゾンの決定的な違いです。

     

    またオゾンによる脱臭は、塩素のように「ある程度の脱臭効果はあるが、有害な物質が残存」することもありません。オゾンは時間が経つと分解され、無害な物質になりますので食品の脱臭・除菌とは非常に親和性が高いのです。

     

    そして、オゾンの生成は「空気が材料」であるため、臭いを出すための「詰め替えカードリッジ」といった消耗品を購入する必要もありません。空気を電気分解するための電極があれば、それでオゾンを作り出すことができるのです。

     

    もちろんオゾンが脱臭できない化学物質があったり、他の方法と比べて本体に少しコストがかかったりなどの欠点はあります。

    しかし、空気を材料としてオゾンを作り、他の材料は一切不要であることから都度消耗品を買い足す費用も手間もいりません。

    長期間使うことを考えると、むしろ割安となるケースが多いと言えます。

    オゾンで美味しい水を作ろう​

    最近はペットボトルの水やオフィスなどにウォーターサーバーを設置する人が増えてきました。安全でおいしい水を飲みたいという人々の欲求が高まってきているのです。

    しかしこのミネラルウォーターですが、実はほとんどがオゾン処理されています。

    いくら美味しいミネラルウォーターであっても、自然界の水をそのまま飲むと有害物質が含まれていることがあるので、「絶対に有害物質が混入しない」採水方法のミネラルウォーターを除き、基本オゾンで処理されています。

     

    安全でおいしい水を求める気持ちは水道水でも同じです。

    水道水でさえ、健康に害がなければいいものから、味わうためのものに変化しつつあります。水道水を売りにしている自治体もあるほどです。

    よって、「水道水は安全であればよい。臭いがしても、やや赤茶けていても文句を言うな」という時代はとうに終わっています。

     

    浄水施設にオゾンが使われ始めたのは、ヨーロッパが先駆者です。

    1890年代にチフスやコレラが流行して多くの死者がでたヨーロッパでは、オゾン処理が水に対して有効だという研究結果が続々となされました。最初に大規模に浄水処理にオゾンを採用したのはフランスのニースです。

     

    現在はフランス国内の700箇所をはじめ、ヨーロッパの多くの浄水場でオゾン処理を採用することになっています。

    日本では、オゾン処理よりも塩素処理のほうが経済的ということで、ヨーロッパよりも出遅れていました。しかし塩素処理ではカビ臭さの苦情が多発していました。

    従来の塩素処理ではカビ臭さにはほとんど効果はありません。塩素処理は、有害物質を除去することで水の安全性は確保してくれるものの、臭いの除去には役に立たないのです。臭気が発生した場合は、活性炭を投入し、原因物質を吸着させるという対処療法をするのが精一杯でした。また塩素は、ガンの発生物質の疑いのあるトリハロメタンが発生するので問題にもなりました。

     

    現在では、東京都、大阪府、大阪市といった自治体の浄水処理でオゾンが利用されています。

     

    「飲める水」の一歩先、つまり「臭わない美味しい水」を実現するための高度浄水処理には、オゾンが必要不可欠だからです。

    当初は、大きな自治体でしか実施されていない処理でしたが、現在では千葉県の北部の自治体連合(松戸市、野田市、柏市など)や埼玉県川口市などでも行われるようになり、中規模以下の自治体での採用が相次いでいます。

    特に東京の水道水の美味しさは有名です。

    ミネラルウォーターと比べて引けを取らないことから、東京都東村山市の東村山浄水場で高度浄水処理された水を「東京水」という名前でペットボトルに詰めて販売しているほどです。

    別の言い方をすると、東京都民はミネラルウォーターと同じくらいの品質の水を、水道水として毎日飲むことができるようになっているのです。

    これもオゾンのおかげです。

    オゾンの毒性に注意

    オゾンは、濃度が高いと人体に影響を及ぼします。「オゾンの基礎と応用」(杉光英俊著)から、どのような影響があるのが引用してみましょう。

    ppmとは、par per millionの略で、100万分の1を意味しています。

    気体中の体積比を見てみると、空気中に1ppmは、0.0001%という計算になります。

    日々生活している私達の環境では、空気中のオゾン量は通常、0.005ppm程度となります。

     

    この表にあるように、0.01〜0.02ppmまでオゾン濃度があがると、少しオゾンのにおいがします。実際に害が発生するのは、0.2〜0.5ppmくらいのオゾン量からです。

     

    低濃度でも人間の嗅覚はオゾンを察知することができます。高濃度のオゾン環境は、オゾンのにおいが大変強いものとなります。

     

    とはいえ、日常暮らしている中で、強いオゾンのにおいを感じることはまずありません。もし臭いを感じるとしたら、オゾン発生器が使われている環境に足を踏み入れた時くらいでしょう。

    もし、強いオゾンのにおいがすればその場を離れたり、換気したりすれば大丈夫です。

     

    オゾンの各種作業環境での許容オゾン濃度は0.1ppmと定められています。この濃度は、日本であれ、アメリカであれ、同様に基準が決められています。

    オゾン濃度は環境によって変わります。

    高濃度のオゾン発生器でも広い場所で使えばオゾン濃度はあがりませんし、出力の低い家庭用のオゾン発生器でも狭い空間で使用すればオゾン濃度はあがります。

    計測する場所の広さによって異なるのです。

     

    オゾンは強力な酸化力があり、毒性も強いです。使い方次第で、毒にも薬にもなるのです。

     

    とはいえ、オゾン発生器の説明書に従って正しく利用すれば、人体に害を及ぼすことはまずありませんのでご安心ください。

    このように、オゾンはオゾン層として紫外線から私たちを守る以外に、脱臭や除菌などの多くの役割を果たしています。

     

    私たちの生活において目に見えない部分の安全を、オゾンが守ってくれているのです。